介護職のメンタル疲労と燃え尽き症候群。その対処法とは?
更新日:2023/09/27
介護職は、利用者と向き合い支援を行う重要性が高い仕事です。大きなやりがいがある一方で、心身共に大きな負担が伴います。この記事では、なぜ介護職はメンタルがやられるのか、燃え尽き症候群とは何かなどについて考え、ストレス軽減のためにできる対策をみていきます。
この記事はこんな方にオススメです。
・介護の仕事に悩みや不安がある方
・ストレス対策について知りたい方
目次
介護職が抱えるストレス
介護職は、支援が必要な高齢者に介護サービスを提供する、なくてはならない仕事です。しかし、様々なストレスを抱えながら、業務にあたっている状況にあります。
介護労働安定センターの調査によると、仕事や職業生活に関する不安・悩み・ストレスが「ある」と回答した人は85.8%と多数を占めています。また、具体的な内容については以下のとおりです。
職場や仕事について感じていることに対するストレス程度(上位10項目)
介護従事者数が不足している | 65.7% |
仕事内容のわりに賃金が低い | 56.4% |
深夜勤務時に何か起こるのではないかと不安がある | 43.8% |
認知症の入居者への対応が難しい | 35.8% |
福祉機器の不足や施設の構造により介護しにくい | 34.9% |
入居者がいつ問題行動を起こすのかと不安がある | 34.8% |
何をやってもらっても当然と思う入居者がいる | 34.4% |
任されている仕事が多すぎる | 33.7% |
今の仕事は身体的負担が大きい | 33.7% |
入居者に適切なケアができているのか不安がある | 32.7% |
引用:介護労働安定センター「平成28年度介護労働実態調査(特別調査)」(PDF)
この結果から、介護の仕事は人手が足りない中で責任のある業務にあたらなければならず、心身共にストレスを感じやすいことが分かります。
実際に筆者が介護職として働いていた際にも、以下のような悩みや不安がありました。
- 1人で夜勤を行うため、何かあったらどうしようと常に不安である
- 勤務時間が様々で生活リズムが崩れやすく、夜勤では仮眠がなく体力的にもきつい
- 力の強い利用者の暴力に対処できない、病気によるものと分かっているからこそ向き合った対応をし、うまくいかずの繰り返しに疲弊する
- 施設側の職員に対するメンタルケアが十分ではない(不穏症状に対しても対応力をもっと身に付ければ対処できるという考え方だった)
- 合わない職員がいても、業務上コミュニケーションを取らなければならず気を遣う
- 共に働く職員のフォローが大変 など
介護の仕事にやりがいを持ち働いているからこそ、同じような悩みを持っていても頑張り続けてしまう介護職の方は多くいると思います。その頑張りが気づかぬうちに自身を追い詰めていることもありますので、注意が必要です。
燃え尽き症候群とは
介護職のストレスと関係する病気の一つに、燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)があります。燃え尽き症候群とは、今まで熱心に業務にあたっていた人が、心身の疲労から燃え尽きたようになり、熱意や意欲を失ってしまう状態をいいます。
燃え尽き症候群は、突然熱意を失うように見えますが、以下のような兆候があります。
- 眠れなくなる、朝起きられない
- ちょっとしたことでイライラする
- 倦怠感や疲労感
- 気分の落ち込み
- 食欲不振
- アルコールを飲む頻度が増える
気になるものの我慢できる程度の不調が前兆として現れるため、働き続けてしまい燃え尽き症候群を引き起こします。不調を感じたら、早めに対処することが大切です。
ストレス対策と健康管理
過度なストレスを感じ続けると、心身の健康を保てなくなるおそれがあります。まずは自身のストレスを自覚し、自分に合った対処法を実践していきましょう。また、施設側がストレスケアを行うことも重要です。
ストレスの現状把握には、「職業性ストレス簡易調査票(PDF)」が活用されています。ストレス判定方法は、「職業性ストレス簡易調査マニュアル(PDF)」でご確認ください。
介護職自身が行う対策
ストレスを解消するために、心身の健康管理の実践を心がけていきましょう。いくつかのポイントを挙げました。
規則正しい生活を送る
勤務が不規則な場合が多いですが、そのような中でも、夜勤の前後はしっかり体を休ませる、十分な睡眠や休息をとるようにし、生活リズムを作れるようにしましょう。
健康的な食事を摂る
忙しいと栄養が偏った食事になりがちです。栄養不足やアルコールの飲みすぎは体調不良の原因になるので、3食バランスのとれた食事を心がけましょう。
自分にあう趣味・気分転換法を見つける
楽しみや気分転換する方法を見つけることで心がリフレッシュし、ストレス解消につながります。
業務中もタイミングをみて気分転換する
ずっと忙しく働いていると心身共に疲れ果ててしまいます。職員や利用者との会話を楽しむ、利用者と一緒にテレビを見る・レクをするなどし、一息つく時間を作ることが大切です。
相談できる人を見つけておく
信頼できる相談相手を見つけておくことで、悩んだ際に真摯に相談に乗ってくれるでしょう。周りにいない場合、相談窓口を活用しても良いです。一人で抱え込まず、誰かを頼ることも考えてください。
転職を考える
現在の職場での負担が大きく、どうしても不安や悩みを解決できない場合、転職し新たな環境でスタートを切ることも良いでしょう。施設形態や勤務時間帯など働きたい環境を明確にし、自分に合う職場を探してみましょう。
施設側が行う対策
介護職がストレスを抱えて健康を保てなくなると、離職につながったり、利用者に適切なケアができなくなったりと、良くない結果をもたらします。施設として職員のストレスケアに取り組むことは重要といえるのです。具体的な対策について挙げました。
- 困っていることはないか、上司から声掛けしたり、定期的な面談の場を設けたりする
- 相談窓口を設置する
- 相談できるスタッフを配置する(心理カウンセラー、ソーシャルワーカーなど)
- 職員の頑張りを評価する
利用者だけでなく職員と向き合うことを忘れず、働きやすい環境をつくっていきましょう。
まとめ
超高齢化社会の現代で、介護職は必要不可欠な存在です。人のために働くことにやりがいを感じ従事する介護職の方々が、仕事のストレスにより体調を崩してしまうことは避けなければなりません。
ストレスを100%無くすことは難しくても、軽減するためにできる取り組みは多くあります。介護職自身、施設の運営側双方が正しくストレスについて知り、負担を減らしていくことが大切です。介護職の方々が、健康で充実した毎日を送り、よりよい介護サービスを提供できることを願っています。