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介護職員同士のコミュニケーションの悩み。うまくいかない時の対処法とは?

更新日:2023/09/15

介護の仕事にやりがいや楽しさを感じて働いているのに、職場の人間関係が原因で離職する人が多くいます。「スタッフ同士の人間関係がうまくいかない」「苦手な人とのコミュニケーションをどう取ればよいだろう」と悩んでいる方に、アンケート結果を見ながら対処法を考えていきます。

この記事はこんな方にオススメです。

・職員同士の人間関係に悩みがある方
・介護職の離職率を下げたい方

チーム内でのコミュニケーション

介護職として働く人にとって、利用者とコミュニケーションを図り、良い関係を築いていくことはとても大切です。しかしそれだけではなく、同じ職場で働く人とも円滑なコミュニケーションを取ることが求められます。

介護の現場では、チームケアと呼ばれ、介護職員同士、または多職種と連携し、複数人で協力しながら利用者の支援にあたります。

もし、申し送りがしっかりされなかったり、声掛けが不十分だったりして連携不足が生じると、以下のようなリスクがあります。

  • 職員によってケアの内容や手順が異なり、利用者が混乱してしまう
  • 常に見守りが必要な利用者から目を離してしまうことで、事故が起きる可能性がある

チーム内での人間関係がうまくいかず、コミュニケーションが取れていないと、利用者のケアに悪い影響を与えてしまうのです。

介護職の退職理由

一般の人からみると、「介護業界は人手不足で忙しそう」「身体介護や夜勤で体力的にハード」「認知症の方の対応で精神的に辛そう」などのイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、実際に介護職を退職した人へのアンケートによると、職場の人間関係に問題があり退職した人の割合が最も多いことが分かります。

前職(介護関係)をやめた理由

理由 割合
職場の人間関係に問題があったため 27.5%
法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため 22.8%
他に良い仕事・職場があったため 19.0%
収入が少なかったため 18.6%
自分の将来の見込みが立たなかったため 15.0%

引用:介護労働安定センター 「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(PDF)

介護職員が抱える悩み

具体的には、人間関係のどのような部分に悩んでいるのでしょうか。こちらもアンケート結果をみていきます。

職場での人間関係等の悩み、不安、不満等(複数回答)

内容 割合
部下の指導が難しい 20.3%
自分と合わない上司や同僚がいる 20.2%
経営層や管理職等の管理能力が低い、業務の指示が不明確、不十分である 19.7%
ケアの方法等について意見交換が不十分である 18.6%
上司や同僚との仕事上の意思疎通がうまく行かない 15.0%
経営層の介護の基本方針、理念が不明確である 13.4%
悩みの相談相手がいない、相談窓口がない 10.9%
上司や同僚の介護能力が低い 10.1%

チームケアで働く職種だからこそ、性格や意見の違い、方針の不明確さ、介護能力の差についてなど、不安に感じやすいのだと思います。実際に筆者がグループホームで勤務していた際にも、職員に声掛けをしても返答がなかったり、利用者への言葉遣いが不適切に感じたりと、同じような悩みがありました。

介護施設では、幅広い年齢の様々な経験を持つ職員が働いているため、考え方が異なるのは当然のことかもしれません。お互いを理解し合い、連携をとって働くことができれば良いですが、意見が合わないと働きづらさやストレスを感じることもあるでしょう。

介護の仕事にやりがいや誇りを持ち働いている場合、人間関係の悩みが原因で、離職を選ぶのはもったいないように思います。まずは、離職以外の選択肢や解決法はないか、一緒に考えてみましょう。

人間関係を良くするコツ

苦手な職員と一緒に働かなければならない場合、少し意識や対応を変えるだけで関係が改善されたり、ストレスが減ったりする場合があります。対応のポイントを挙げました。

相手の立場になって考えてみる

相手の言動に納得いかないことがあっても、まずは冷静になりましょう。相手がなぜそうしようと思ったのか考えることで、理解できる点が見つかるかもしれません。理解できなくても、考え方は人それぞれ違うものと割り切ることで、気持ちが楽になることもあります。

相手の性格・特徴に合わせた対応をする

筆者の実体験では、利用者のケアに入るためフロアの見守りをしてもらうよう声掛けし、相手から返事があったのに見てくれていないことがよくありました。そのような場合は、しつこく感じない程度に3回同じことを伝える、利用者のケアをしながらフロアにも気を配るようにする、など相手に合わせた対応を心がけていました。

相手の意見を否定しない

意見を否定されると、誰でも嫌な気持ちになるものです。たとえ相手の意見が自分と異なっていても、まずは共感してみましょう。自分の意見を伝えたい場合は、共感した後に「こういう考えはどうですか?」と提案してみると良いでしょう。ただ、明らかに意見が間違っていて、業務に支障が出る場合もあると思います。直接伝えて関係が悪化しそうな時は、「確認しますね」などと伝え、上司に相談することをおすすめします。

人間関係を改善できない時の対処法

対応を工夫してみても中々関係が良くならない場合は、我慢し続けないことが大切です。ストレスをため続けることで、精神的に疲れて体調を崩してしまうこともあります。対処法をいくつか紹介します。

上司に相談する

フロアリーダーや施設長など上司に相談しましょう。これまでも人間関係の問題を解決した経験がある、苦手なスタッフの性格をよく知っている場合があります。相手に改善するよう伝えてくれる、シフトをなるべく重ならないように調整してくれる、問題がある時にはフロア異動を考えてくれるかもしれません。しかし信頼できない上司の場合は、改善が期待できないことがあります。

相談窓口を利用する

施設側が相談窓口を設けている場合がありますし、行政などが福祉職向けに設置しています。職場で相談できる人がいない際には、活用してみてください。誰かに聞いてもらえるだけでも、心が軽くなると思います。

ミーティングを習慣化する

毎日10分でもチームでミーティングする機会を設けることで、情報共有がしっかりされるようになり、利用者の些細な変化や気になることなども話し合うことができます。チームワーク、サービスの質の向上につながるでしょう。入所施設では、日勤者と夜勤者が共に働く時間は限られるため、スタッフによって、ケアの方法に違いはないか確認することもできます。

訪問介護員として働く

上記の「職場での人間関係等の悩み、不安、不満等」のアンケート結果では、「職場での人間関係について特に悩み、不安、不満等は感じていない」という方は全体で32.8%でした。サービス系型でみると、施設系(入所型)が20.4%なのに対して、訪問系は39.4%、居宅介護支援は43.1%と不安を感じてない方の割合が高くなっていました。

一人で業務を行うことが多い訪問介護員として働くことで、人間関係のストレスから解放され、自分に合う働き方が見つかるかもしれません。施設勤務の方でも、会社や法人内で訪問介護事業を行っていることもあるので、異動できないか上司に相談してみましょう。

職場見学や面接の際に確認する

どうしても解決法がなく転職を考える方、これから介護職として働き出す方は、職場見学や面接の際に施設の雰囲気を確認しましょう。以下は、チェックするポイントの一例です。

  • 職員は笑顔で楽しそうに働いているか
  • 利用者は穏やかに過ごせているか
  • 利用者の尊厳を保ったケアを提供しているか
  • 施設の理念は共感できるものか

全てのスタッフと顔を合わせることはできなくても、ケアの質が高い施設であれば良い雰囲気を感じることができるでしょう。「ここで働きたい」と思える職場を見つけることが大切です。

まとめ

介護職は、自分自身の働きが利用者の自立支援につながり、専門的なスキルを活かしながら働くことができるやりがいの大きな仕事です。介護の仕事が好きなのに、人間関係が原因でより良いケアができない、離職せざる負えなくなるのは辛いと思います。まずは、働きながらできる対処法を試してみましょう。

どうしても改善が難しい場合は、無理をし続けて体調を崩さないように注意が必要です。介護職として働ける場所はたくさんあります。様々な選択肢を視野に入れながら、働きやすい環境で介護に携わっていけることを願っています。

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