最期まで自分らしく生きていこう
更新日:2022/10/17
■本記事の取材先
医療法人社団 焔(やまと診療所)
医療法人社団焔 やまと診療所では「自宅で自分らしく死ねる、そういう世の中をつくる。」を理念に掲げています。「自分らしく死ねる」とは、「最期まで自分らしく“生きる”」ことだと考え、自分らしく過ごせる自宅での在宅医療(訪問診療)を提供しています。
目次
非・健康寿命とは?
日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57 歳(2021 年)です。ですが多くの人は「死ぬまで健康」というわけにはいきません。
平均寿命と健康寿命の間には、男性で9 年、女性で13 年にもおよぶ「非・健康寿命」が存在します。医療や介護を受けながら生活していく期間のことです。
※上図:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)(厚生労働省)を参照し作成 |
理想の死に方
ホスピス・緩和ケアに関する意識調査(2018 年・日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団調べ)では、自分で死に方を決められるとしたら「ある日、心臓病などで突然死ぬ」(ぽっくり死)と、「病気などで徐々に弱って死ぬ」(ゆっくり死)、どちらが理想だと思うかをたずねました。すると全ての年代で7 割を超える人が「ぽっくり死」を望んでいることがわかりました。年齢を重ねるにつれ「ぽっくり死」と回答する人が増え、多くの高齢者が「ピンピンコロリ」願望を持っていることがわかります。できれば人の世話になるような非・健康寿命は生きたくない、その時のことは考えたくもないという願望が強いと捉えられます。
しかし日本人の死因のトップ5 で悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎のいずれにおいても「ピンピンコロリ」でお迎えがくる確率は低いと言わざるを得ません。望んでいなくても非・健康寿命は必ずくるのです。非・健康寿命と正面から向き合って、この時間をどう豊かに生きるか。これを考えることは、とても大切です。本人だけでなく、その先を生き続ける子供たちや孫たちにとっても、非常に大きな影響があります。
※上図:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)(厚生労働省)を参照し作成 |
「療養生活」は「通常の生活」
年をとっても自分らしく生きるおじいちゃんやおばあちゃんを見られることこそ、彼らにとっての、未来に向けた大きな希望になります。私は医師としてこれまで1 万人を越える人々の非・健康寿命に関わってきました。通院が困難になっても自宅で過ごしたいという人々を支えるのが在宅医療です。「療養生活」と表現されることもありますが、私の感覚としては療養ではありません。
それまで生きてきた家で、これからも人生を生きる。そこに病気や老いという不自由が同居しているというだけで、療養ではなく「通常の生活」です。同じ理由で、積極的な治療を必要とする状態ではない、または治療してもそれほど効果がないのに、「なにかあったら不安だから」という理由で病院に入院するというのもおかしな話です。
超高齢化社会という言葉には常に暗いイメージがつきまといます。しかし、最期まで自分らしい人生にこだわって生きている人たちが多い国になれば、暗いイメージを払拭できることでしょう。「非・健康寿命をいきいき生きる」、これは明るい日本の未来へのテーマです。
■取材を受けてくれた方
医療法人社団 焔(やまと診療所)
安井 佑(やすい ゆう)氏
医師。在宅医療専門のTEAM BLUE(やまと診療所)代表。スタッフ約150名で約1200名の患者を診療。全国有数の自宅看取り実績を持つ。