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在宅医療だからできること。お家で「過ごせる」という安心感

更新日:2023/07/26

24時間365日、在宅診療から看取りまですべてを常勤のスタッフで対応しているしろひげ在宅診療所。
最期の時間までお家で過ごすことの大切さ、そこにある安心と「幸せのカタチ」について、院長の山中光茂先生にききました。

在宅医療だからできることは何がありますか?

病院での診療だと、患者さんの病気をどう改善するかが一番の目的となります。症状や経過、ヒアリングを通して患者さんの様子を診ることはできますが、一方で病気以外の生活面であったり、普段のちょっとした困りごとには、対面する時間が短いためどうしても把握しづらいですね。それに、患者さんによっては治療で毎日通院が必要になった時、ご本人が大変なのはもちろん、病院へ付き添うご家族にも、とても負担が大きい。

その点、訪問診療だと患者さんが普段どのように生活しているのか、ご家族がどう接しているのかを実感できます。なので病気だけでなく、患者さんやご家族にとって何が必要なのかを、一緒に考えることができますね。

 

看取りについて、どのように考えていますか?

「お家で過ごしたい」は誰でも思うこと

最期をどこで迎えるかは、とても重要なことだと思います。病院よりも治療に制限があるため在宅だと重症度によって対応してもらえない、と思っている方もいらっしゃいますが、在宅医療でもしっかりと環境を準備しておけば、患者さんの様態に関わらず在宅での療養を考えることは可能です。

実際、当院の患者さんにも重度の認知症患者や末期の癌、難病の方も多くいらっしゃいますが、重症度や病名を理由に患者さんをお断りしたことは一度もありません。

最期を迎える時はご自宅で穏やかに過ごしたい、と思うことは当然のことです。そんな時、病院での治療以外にも、在宅医療という選択肢があることを知ってほしい。重症度や環境を理由に諦めてしまうのはもったいない、と常日頃感じています。

 

――ご自宅で最期を迎えられたら、嬉しいですよね。

そうですね。医師として患者さんの症状を軽減させることはもちろん大切ですが、それと同時に、患者さんやご家族が安心して生活できる環境を整えることも必要だと思っています。例えば癌の患者さんの場合、実は病気の症状よりも治療の副作用に苦しむ方が多かったりします。そんな時、単に病状に対して医療処置をするのではなく、病気との付き合い方を一緒に考えて、薬を調節するなどで患者さんの病気よりも、まずは苦痛を取り除く。それがご本人、ご家族どちらにとっても幸せな最期につながることもあり得ると思っています。

それともう一つ、これは自論ですが、看取りを含めた在宅療養において大切なのは、医療が2割で残り8割は介護の力だと思っています。なので、どんなに病状が重たくて寝たきりであっても、たとえ家族と離れて暮らしていたとしても、介護の力があれば、安心して幸せな最期を迎えられるような環境は在宅でも整えられる。これを私たち医療従事者からもしっかりと伝えていかなければならないと思っています。

 

最後に、在宅療養者、またご家族に向けてメッセージをお願いします。

 

在宅療養を選択すると、患者さんご本人やご家族の方は、生活が大変にならないか、負担が多いのではないかと不安感を抱いてしまうのではないでしょうか。

ですがちゃんと介護認定を受けて、上手にサービスを利用すれば、介護保険制度内でも十分に訪問介護、医療を受けることができます。なので一度、医師や介護士、ケアマネジャーなどに相談してみてください。

在宅に関わらず、医療や介護についてご本人とご家族だけで抱えてしまうと、心身ともに疲弊してしまいます。たまには休んでいい。そう考えられるように私たちがいます。

家族全員が愛情を注ぎあい、安心して幸せな最期の瞬間を迎えられるよう、医療を通してサポートすることが、私たちの役目です。

 

■取材を受けてくれた方

しろひげ在宅診療所
山中光茂 氏(理事長・院長)
慶應義塾大学法学部卒業後、群馬大学医学部に入学。卒業後はアフリカのケニアに渡り、HIV孤児支援などの事業に携わる。帰国後、当時全国最年少市長として三重県松阪市市長に就任。2期務めた後、三重県四日市市で在宅医療に従事。
2018年 東京都江戸川区で開業。医師・看護師など全て常勤のスタッフでガン末期と重症度の高い患者を常時1000人以上受け入れており、年間200人以上の在宅看取りをしている。全国の自治体で在宅医療や行政改革についての研修・講演活動を行う。著書に「小説 しろひげ在宅診療所」がある。

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