×

療養生活の知恵 療養生活の知恵

暮らし

暮らしの記事一覧

思わず乗りたくなる、近距離モビリティWHILL

更新日:2022/07/27

WHILL株式会社では、操作性とデザイン性にこだわった近距離モビリティ(次世代型電動車椅子)WHILLの開発を行っています。今回は、だれでも乗りたいと思えるような乗り物を開発するに至った経緯や、商品詳細についてお話を伺いました。

この記事はこんな方にオススメです。

・車椅子を必要としている方
・一般的な自走式車椅子の操作が難しい方
・人目を気にせず車椅子を利用したい方

■本記事の取材先

WHILL株式会社

「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションとして、世界中で近距離移動のプロダクト・サービスを展開する。2012年5月に日本で創業し、2013年4月に米国、2018年8月にオランダ、2019年12月には中国に拠点を設立。近距離モビリティWHILLの販売、レンタル、シェアリングの3事業を、20以上の国と地域で展開する。3本柱の事業を通じ、歩道だけでなく屋内まで走ることができ、他の移動手段では行けなかった、どんな場所にもつながる世界を構築する。

WHILLを開発するまでの経緯を教えてください。

以前、車椅子を利用されている方から、「100メートル先のコンビニへ行くのを諦める」というお話を伺ったことがありました。そのわけを尋ねると、段差があるので最短距離ではなくどうしても道を選ばなければならない、行動範囲が決められてしまっているのが窮屈、といった理由や、人の目が気になり、自分が「車椅子に乗っている人」と見られてしまう、といった心理的な理由を話してくださりました。たしかに車椅子は一般的に認知されるようになってからというもの、長年にわたりそのフォルムがほとんど変わっておらず、「助けを必要としている人」、「立場の弱い人」といった印象を持たれがちかもしれません。人の視線が気になって、外出することがますます億劫になってしまうお気持ちがよく分かり、胸が痛くなりました。

そこで私たちは「それならあの段差を乗り越えられるものをつくろう!」、「乗っていて楽しく、かっこいい乗り物をつくろう!」 といった想いから開発をスタートさせました。そうした利用者の物理的なハードルと、心理的なハードルを越えるために、テクノロジーとデザインの力でなにができるだろうか、ということを考え続けた結果、現在の商品開発へと至りました。

これまでの開発の歴史を教えてください。

最初に発表したのは2014年のことで、初号機は7cmの段差を超えることができるなど、優れた走破性をもった電動⾞椅⼦として発売を開始しました。しかしボディが大きく、また非常に高価なものとなっていましたので、2017年に初号機をコンパクトにした「Model C」を発表しました。具体的な内容につきましては後ほど詳述させていただきますが、現在主にお使いいただいているのはこのモデルCをさらに改良した「Model C2」、そしてよりコンパクトな設計がなされた「Model F」となっております。

いずれも元自動車メーカーのデザイナーらがデザインを手がけ、スマートで見た目も楽しんでいただけるものとなっています。たとえば、一般的には地面と平行になっているアームの部分を、斜めに設計することでいわゆる「椅子らしさ」からの脱却を図り、前に進むモビリティのようなデザインと、⾃動⾞のようなメタリックな形姿を持ち合わせています。色も10種類のご用意があるので、それぞれお好みに合わせて自由に選んでいただけます。

商品の強みを教えてください。

「モデルC2」の強みは、十分に舗装されていない砂利道や芝生を走行することに長けている点です。車のSUVを思い浮かべていただけるとイメージがつきやすいでしょうか。比較的タイヤが大きいので、5センチの段差を乗り越えることができます。業界を見渡しても、この5センチという⾼さを越えられるスペックは稀有であると思っています。また、シート下には衝撃を吸収するサスペンションが搭載されていますので、長時間乗っていても疲れにくいという特徴があります。

「モデルF」の強みはどのような点にありますか?

「モデルF」は、大幅な軽量化による折り畳んで持ち運べる設計が特徴となっています。車でいうところの、まさにコンパクトカーをイメージしていただけると分かりやすいのではないでしょうか。気軽に乗りたい方、それほど頻繁には乗らない方、狭いスペース内で保管したい方などにおすすめの商品となっております。また折りたたみ式となっていますので、車のトランクなどに収めてかんたんに運ぶこともできます。

ご利用中の方からはどのようなお声をいただきますか?

嬉しいことにとてもご好評です。「行動範囲が広がったので好きな時に、好きなところに行けるようになった。」といったお声や、「これまで車椅子を押して歩いていたが、 WHILLを使い始めてから並んで歩けるようになった。お互い楽になり、会話も増えた。」といったお言葉をいただいております。なかには問題なく歩行が可能な方でも、体力温存のためにご使用いただいている例もございますし、親御様へのプレゼントとして購入される方も多くいらしゃいます。

今後の目標を教えてください。

WHILLは、購入だけではなくレンタルとしてもご利用いただけますので、旅行や出張の際などに短期的にお使いいただくこともできます。したがいまして今後は、さらに認知を広めて、⾄るところでWHILLが使えるようなシェアリングサービスの輪も広げていきたいと思っています。そして目的地までの移動に困ることがなく、すべての人が楽しく、継ぎ目のない移動ができるようサポートしていきたいと思っております。

 

■編集後記

つい乗りたくなるような車椅子という発想には驚きましたが、ひと目を気にせず(むしろひとに自慢したくなるような)車椅子を乗るひとが増えることで、きっと社会全体も車椅子が珍しいものではなく、誰もが選択肢として持ち得る移動手段であることを次第に認識していくのでしょう。この相乗効果によって、個人がもつ属性にかかわらず、すべての人がシームレスに移動できる時代も決して遠くはないのだと改めて勇気をもらいました。

執筆者:リブライフ編集部

■キーワード