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元救急医が思う在宅医療のやりがいとは?

更新日:2023/07/14

多い時は1日13〜15人の患者宅を訪問する藤田先生。元救急医が思う在宅医療のやりがいを聞きました。

楽しみながら在宅で暮らすには?仕事をする中で、先生はどうお考えですか。

在宅医療を受ける方は、本当にさまざまです。認知症の方の多くは、ご自身の思うままに過ごしていらっしゃいますね。逆に、認知面でしっかりしているのに、身体を動かしづらい方は、辛いことも多いと思います。デイサービスなどを利用して、人と集まれる場所に行きながら楽しんでもらいたいです。やはり人との関わり合いは大切です。いい気分転換になり、楽しい在宅療養に繋がっていきます。

関わるのが家族だけになってしまうと、どうしても煮詰まることもありますよね。本人だけでなく、介護する家族も煮詰まることがある。24時間365日の介護状態は精神衛生上よくありません。双方がハッピーでないと辛くなるばかりなので、介護している方にも是非リフレッシュしていただきたいです。当院には気楽に短期入院ができる施設やサービスもあります。本人はもちろん、家族もリフレッシュできるので、家に帰ってきたときに新たな気持ちで介護することができる。より良い環境を作るための施設利用だと捉えていただければと思います。

 

病院勤務から在宅医療に移られたきっかけを教えてください。

以前私は救命センターに長く勤めており、最も治療難易度の高い救命救急医療に対応していました。さまざまな経験をしましたが、中には望みもしない治療を施される高齢の患者さんもいました。もちろん延命治療はとても大切なことですが、管をたくさん繋がれた姿を見ると可哀想だなと思うこともあります。その人の幸せな人生を考えると、医療介入がすべて正しい事ではないというのが僕の持論です。医療はどこかで線引きする必要があります。

たとえば、かかりつけ医をつくれば、救命センターに行かずとも死亡を確認できます。過剰な医療や投薬はなるべく少なくする。患者さんにとって良い環境をつくるのも、医者の役目だと思って、在宅の道に入りました。

 

――素晴らしい志を持って従事されていることが伝わってきます。

いいえ、とんでもない。僕の中で完結できても、社会がうまく回っていかないことにはみんながハッピーにならないので。草の根運動から始めようと思っています。

 

病院と在宅医療で、印象的な違いはありますか。

笑い話だと、トイレです。いろんな場所を回ると、すぐトイレに行けないので緊迫感がありますね(笑)。まあそれは置いといて、病院のように自分のところに患者さんに来てもらうのと、こちらから家にお邪魔するのとでは様相が全く異なります。普通のお宅には病院のような設備はないし、お宅それぞれで環境も違います。そこは自覚をもち、医療行為に臨んでいます。

 

病院と自宅とでは、どちらが人生の最期を幸せに迎えられると思いますか。

ケースによると思います。自宅で過ごしていましたが、病院で治療の必要があり、残念ながら病院で亡くなることもあるでしょう。病院で治療ができず、自宅に戻られた方に関しては、慣れた自分の家で最期を迎えられるのは良いことです。最近のご時世ですと、病院のお看取りでは、亡くなってからしか会えないケースもあるようです。ご自宅ならそういった制限もなく、ご家族に見守られながら穏やかな最期を迎えられるでしょう。

 

最後に、在宅療養者の方に向けてメッセージをお願いします。

先程も申し上げたとおり、医療の介入がすべて正しいわけではありません。自宅でも十分、病院に負けない対応は可能です。病院以外の場所で、最期の時間を大切な方々と過ごす選択肢もありますから、ご自身の望むような人生を過ごしていきましょう。

 

■取材を受けてくれた方

いずみホームケアクリニック
藤田 英伸(ふじた ひでのぶ)氏
平成16年東京大学医学部医学科卒業。焼津市立総合病院で初期研修を開始、修了した。東京大学医学部付属病院救急部・集中治療部で後期研修を開始。後期研修期間中、福島県の救命センターで研鑽を積む。大学に戻り、助教となり治療の傍ら、研修医の指導にもあたる。その後、茨城県の病院で主に整形外傷の勉強をし、平成26年から都内高度救命救急センターで医長を務めながら日々、整形外傷の治療にあたりつつ、救急医としての仕事にも尽力した。令和2年より在宅診療の道にはいり、いずみホームケアクリニックには令和3年9月入職。10月より院長に就任し現在に至る。

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