認知症の代表的な4つの種類とは?それぞれの症状や対応について説明します
更新日:2023/09/15
超高齢化社会である現代、認知症について正しく理解し、対応していくことはとても重要です。認知症は、原因の疾患や症状により、いくつかの種類に分けられます。この記事では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つの種類に焦点を当て、その特徴や割合、対応について解説します。
この記事はこんな方にオススメです。
・認知症について知りたい方
・認知症の方の介護に活かしたい方
目次
認知症とは
認知症とは、さまざまな脳の病気や障害によって脳の認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。認知症は病名ではなく、そのような状態を指す総称です。
日本では、平均寿命の長寿化と同時に、認知症の高齢者数も増加傾向です。平成29年度高齢者白書によると、認知症の高齢者数は、2012年には高齢者人口の約7人に1人(約15%)だったのに対し、2025年には約5人に1人(約20%)になるとの推計もあります。
誰もが認知症になりうるといえます。認知症について理解し、今からできる予防や早期発見・治療に活かしていきましょう。
認知症の種類
認知症は、原因となる疾患や症状によって、いくつかの種類に分けられます。代表的な4つの種類について説明します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症患者の中で最も多い認知症で、67.6%を占めています。たんぱく質のひとつであるアミロイドβが脳に溜まり、神経細胞が死滅の方向に変性するものです。大脳や、記憶をつかさどる海馬の萎縮がみられます。
初期には、軽度の物忘れなどの記憶障害が現れますが、加齢による物忘れと間違えられやすく、初期症状を見逃す恐れがあります。食事をした、買い物に行ったなどの行動や体験そのものを忘れてしまっている場合、アルツハイマー型認知症を疑いましょう。
治療のポイント
現在のところ根本的な治療法はありませんが、早期に発見し、認知症の進行を遅らせる抗認知症薬を使用することが有効である場合が多いです。非薬物療法として、音楽療法や、昔のことを回想する回想法もなされています。何度も同じ話をすることがありますが、介護者は無視せず、寄り添い付き合っていくことが大切です。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症の次に多い認知症で、19.5%を占めています。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などにより、脳細胞に送られる血流が滞り、細胞が壊死してしまうことで発症します。脳血管障害が起こるたびに、症状が段階的に進行します。また、損傷した脳の部位によって、出現する症状に差があります。
治療のポイント
高血圧や糖尿病などの生活習慣病を予防することが重要です。禁酒、禁煙、カロリー・塩分制限など、生活習慣を改善しましょう。脳梗塞が原因疾患の場合、血栓の形成を予防する薬が用いられます。アルツハイマー型認知症を合併していることもありますので、その場合は抗認知症薬が使われることもあります。
アルツハイマー型認知症 | 脳血管性認知症 | |
発症年齢 | 70歳以上に多い | 60~70歳に多い |
男女比 | 女性に多い | 男性に多い |
初期症状 | 物忘れ | 物忘れ |
経過 | 徐々に確実に進行する | 脳血管障害が起こるたびに段階的に進行する |
特徴 | 記憶障害、見当識障害、もの盗られ妄想、徘徊 | 感情のコントロールができない、記憶障害、判断力障害 |
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体というたんぱく質のかたまりが大脳皮質や脳幹に沈着し、神経細胞が破壊されるために発症します。認知症全体に対して占める割合は4.3%です。
初期症状として、現実にはないものが見える幻視が現れ、手足の震えや突進歩行などのパーキンソン症状も伴います。物忘れより幻視がみられるため、認知症と結びつかずに発見が遅れることがあります。
治療のポイント
根本的な治療法はまだありませんが、治療は、自立神経障害やパーキンソン症状など、症状に合わせた薬が用いられます。また、気持ちが安定するよう、回想法や音楽療法などを行います。
幻視が現れている際には、本人には見えているため否定しないようにしましょう。また、パーキンソン症状による転倒事故に注意が必要です。リハビリを行い運動能力を保つことも大切です。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、思考や感情、行動をつかさどる前頭葉と、記憶や言語をつかさどる側頭葉の萎縮によって発症します。認知症全体に対して占める割合は1%ですが、認知症の中で唯一、難病指定を受けています。
初期の特徴として、人格変化や常同行動がみられます。自覚なく万引きなどの反社会的行為をしたり、毎日同じものを食べたりする常同行動が現れたりするため、周囲の方がいち早く異変に気付き、医療機関を受診することが大切です。
治療のポイント
根本的な治療法はまだ確立されていませんが、行動異常に対して、抗うつ薬が有効とされています。特徴的な行動があるため、介護者は戸惑うことが多いでしょう。しかし、無理に行動を制止すると、怒ったり暴力を振るったりすることがあります。病気であることを受け止め、できるだけ本人の意思を尊重しましょう。
レビー小体型認知症 | 前頭側頭型認知症 | |
発症年齢 | 60~80歳に多い | 50~70歳に多い |
男女比 | 男性に多い | 男女差はない |
初期症状 | 幻視、妄想、うつ症状 | 人格変化 |
経過 | 調子の良し悪しをまだらに繰り返して進行する | 進行性で発症後の平均寿命は6~9年 |
特徴 | 幻視、妄想、パーキンソン症状 | 人格変化、社会性の欠如、協調性の低下、非理性的な行動、言語障害 |
まとめ
認知症の種類によって、初期症状の現れ方や、進行のスピード、治療やケアのポイントは異なります。それぞれの特徴について理解していることで、早期発見や適切なケア、ストレス軽減につながるでしょう。認知症の方に寄り添い、その人らしい生活が続けられるようサポートしていくことが大切です。